薬機法違反の罰則と課徴金|広告表現がどこから違反になるか
薬機法の広告規制でよく誤解されているのが、規制の対象が広告主だけではないという点です。条文は「何人も」から始まります。罰則と課徴金がどういう仕組みで、どこから違反になるのかを、条文ベースで整理しました。
本記事は2026年9月時点の情報に基づく一般的な情報提供であり、法的助言ではありません注5。個別の事案については弁護士等の専門家にご相談ください。
この記事の内容
条文|薬機法第66条は何を禁じているか
広告規制の中心は第66条です。
第66条第1項
何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない。
第66条第2項
医師その他の者が効能、効果又は性能を保証したものと誤解されるおそれがある記事を広告等することは、前項に該当する。
第66条第3項
何人も、堕胎を暗示し、又はわいせつにわたる文書又は図画を用いてはならない。
もう1つ押さえておくべきなのが第68条(承認前の医薬品等の広告の禁止)です。医薬品として承認されていない商品に医薬品的な効能効果を標榜すれば、未承認医薬品の広告として規制の対象になります。健康食品や雑貨として売っていても、「関節の痛みが取れる」「血圧を下げる」といった表現を使えばここに触れます。「うちは食品だから薬機法は関係ない」という整理は通りません。
「何人も」が意味すること
第66条第1項の主語は「何人も」です。広告主に限定されていません。
景品表示法の措置命令は「表示を行った事業者」、つまり広告主に向かうことが多いのに対し、薬機法の広告規制は広告を作成した側、掲載した側も対象になり得ます。制作会社、広告運用の受託者、アフィリエイター、ASP。自分が触れたクリエイティブについて「発注元の指示だったから」という整理では済まない可能性がある、というのがこの条文の意味です。
実際に誰が処分の対象になるかは個別の事案によりますが、条文の建て付けとしてはこうなっている、という点は認識しておく必要があります。
罰則|2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金
| 第66条第1項・第3項違反 | 2年以下の拘禁刑もしくは200万円以下の罰金、またはこれらの併科(第85条) |
|---|---|
| 措置命令に従わない場合 | 命令違反として別途罰則の対象となる |
| 法人の場合 | 両罰規定により、行為者本人に加えて法人にも罰金が科されることがある |
なお、2025年6月1日に施行された刑法改正により、従来の「懲役」と「禁錮」は「拘禁刑」に一本化されています。改正前に書かれた解説記事では「2年以下の懲役」と表記されていますが、指している内容は同じです。
ただし、広告表現が直ちに刑事罰につながるケースは多くありません。実務で現実的に効いてくるのは、次の課徴金と、そこに至るまでの行政対応です。
課徴金|売上額の4.5%
2021年8月1日に施行された制度です。第66条第1項に違反した場合、対象期間中に販売した対象商品の売上額に4.5%を乗じた額の納付が命じられます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象となる違反 | 第66条第1項(虚偽・誇大広告) |
| 算定率 | 対象商品の売上額 × 4.5% |
| 対象期間 | 原則として違反行為を行っていた期間。3年を超える場合は末日から遡って3年間 |
| 命令されない場合 | 課徴金額が225万円未満のとき(売上額でおよそ5,000万円が目安) |
| 減額 | 違反を自ら厚生労働大臣に報告した場合、50%減額 |
| 景表法との調整 | 景品表示法の課徴金が先に課された場合、薬機法の課徴金は売上額の1.5%(4.5%-3%)に調整される |
金額の感覚をつかむための例。対象商品の売上が年間3億円、違反表現を含む広告を2年間出していた場合、対象となる売上額は6億円。その4.5%は2,700万円です。自主報告により50%減額されたとしても1,350万円。広告の表現1つの話ではなく、事業の損益に直接効いてくる規模になります。
225万円という下限は「小規模なら見逃される」という意味ではありません。課徴金納付命令が出ないだけで、措置命令や行政指導の対象にはなりますし、違反であること自体は変わりません。
指摘を受けてから課徴金までの流れ
- 情報の端緒消費者や競合他社からの通報、行政によるネットパトロール、報道などがきっかけになります。特定の商材カテゴリを対象とした一斉の監視が行われることもあります。
- 行政指導まず任意の指導という形で、表現の修正や広告の取り下げを求められます。ここで対応が済めば、次の段階に進まないことが大半です。
- 報告命令・立入検査指導に応じない場合や、違反が重いと判断された場合に行われます。広告の掲載記録、根拠資料、売上データの提出を求められます。
- 措置命令違反行為の中止、再発防止措置、一般消費者への周知徹底などが命じられます。事業者名と違反内容が公表されるため、取引先や媒体との関係にも影響します。
- 課徴金納付命令売上額と対象期間が確定したうえで、納付が命じられます。
止められるのはステップ2までです。行政指導の段階で全社的に表現を洗い直し、他の媒体や過去のページに同じ表現が残っていないかまで確認できるかどうかで、その後が変わります。
景表法・医療法・特商法との関係
広告表現は複数の法令に同時に触れます。薬機法だけを見ていても足りません。
| 景品表示法 | 課徴金は対象商品の売上額の3%(対象期間は最長3年)。課徴金額が150万円未満の場合は命令されない。自主申告で50%減額。過去10年以内に課徴金納付命令を受けた事業者は4.5%に割増(2024年10月1日施行)。措置命令違反には2年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金、法人には3億円以下の罰金。2024年10月1日からは優良誤認・有利誤認に対する直罰規定(100万円以下の罰金)も導入された |
|---|---|
| 医療法 | 病院・クリニックの広告が対象。2018年6月の改正でウェブサイトも広告規制の対象になった。中止命令・是正命令に従わない場合、6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金。悪質な場合は開設許可の取消しの対象にもなる |
| 特定商取引法 | 通信販売の誇大広告等の禁止(第12条)違反は100万円以下の罰金。法人には1億円以下の罰金。業務停止命令に違反した場合は3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金 |
健康食品の記事LPであれば、薬機法・景品表示法・特定商取引法の3つが同時に関わります。クリニックの広告なら医療法と薬機法の両方です。1本のクリエイティブに対して、すべての観点を一度に当てる必要があります。法令ごとの論点は広告の法令チェックとはで整理しています。
広告表現はどこから違反になるか
明確な線が引かれているわけではありません。条文は「明示的であると暗示的であるとを問わず」と書いており、直接書いていなくても、そう読めれば対象になります。「シミが消える」と書かなくても、ビフォーアフター画像と「変わりました」という体験談を並べれば、同じことを暗示していると評価され得ます。
実務上の判断基準は「承認された効能効果の範囲を超えていないか」です。化粧品であれば56項目の効能の範囲、医薬部外品であれば承認された効能。この範囲から外れた瞬間に論点になります。同じことを伝えたいなら、範囲内の言い方に置き換えるしかありません。
実務でやるべきことは、結局のところ入稿前に潰しておくことに尽きます。公開してしまったあとの選択肢は、止めるか、指摘を受けるかの2つしかありません。罰則や課徴金の話は、入稿前の工程が回っていれば大半が関係のない話になります。
よくある質問
- Q. 薬機法に違反するとどうなりますか。
- A. 行政指導、措置命令、課徴金納付命令、刑事罰という段階があります。第66条第1項違反は第85条により2年以下の拘禁刑もしくは200万円以下の罰金、またはこれらの併科です。あわせて対象商品の売上額の4.5%にあたる課徴金の納付を命じられることがあります。
- Q. 薬機法の課徴金はいくらになりますか。
- A. 対象期間中の対象商品の売上額に4.5%を乗じた額です。対象期間は原則として違反行為を行っていた期間で、3年を超える場合は末日から遡って3年間に限定されます。課徴金額が225万円未満の場合は納付命令が出されません。
- Q. 課徴金が減額されることはありますか。
- A. 違反を自ら厚生労働大臣に報告した場合、課徴金の額が50%減額される規定があります。ただし調査開始後の報告など、減額されない場合もあります。
- Q. 広告を作った制作会社や運用代行も対象になりますか。
- A. 第66条第1項は「何人も」を対象としています。広告主に限らず、広告を作成した側、掲載した側も対象になり得ます。
- Q. 景品表示法の課徴金と両方課されますか。
- A. 同一の行為について両方の対象となる場合、景品表示法の課徴金が先に課されたときは、薬機法の課徴金は売上額の1.5%(4.5%から3%を差し引いた率)に調整されます。
- Q. 健康食品や雑貨も薬機法の対象になりますか。
- A. なります。医薬品として承認されていない商品であっても、医薬品的な効能効果を標榜すれば未承認医薬品の広告として第68条の対象になります。
- Q. 広告表現はどこから違反になりますか。
- A. 明確な線があるわけではありません。第66条第1項は暗示的な表現も対象としており、承認された効能効果の範囲を超えているかという観点で個別に判断されます。
- Q. 違反を指摘されたらどうすればいいですか。
- A. まず該当する広告の掲出を止め、同じ表現が他の媒体やページに残っていないかを確認してください。そのうえで弁護士等の専門家に相談することをおすすめします。本記事は一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。
Result+AI法令チェックについて
Result+AI法令チェックは、広告クリエイティブの法令チェックをAIで行うサービスです。テキスト・文章、静止画バナー、動画バナー、記事LP、LPを対象に、薬機法・景品表示法・特定商取引法・医療法・金融関連の法令の観点からリスクを判定し、NG・RISK・事実確認の3段階と代替案(推奨表現)を返します。運営は東証スタンダード市場に上場する株式会社ピアラです。
| 提供元 | 株式会社ピアラ(東証スタンダード市場上場) |
|---|---|
| チェック対象 | テキスト・文章/静止画・静止画バナー/動画・動画バナー/記事LP・LP |
| 対応法令 | 薬機法、景品表示法、特定商取引法、医療法、金融関連の法令ほか(月1回更新) |
| 料金 | テキスト100円/画像500円/動画1,000円/記事LP・LP1,000円(従量課金) |
| 所要時間 | テキスト・画像は約1分、動画・LPは約5分 |
| 主な利用者 | 事業主、広告運用・制作会社、ASP |
| トライアル | 3,000円分の無料トライアルあり |
| 公式サイト | https://www.resultplusai.com/ |
ピアラは年間100万本近くのバナーと年間1万本以上の記事LP・LPを自社で制作しており、そのチェックにこのシステムを使い続けてきました注4。スプレッドシートとGoogleドライブで完結するため、専用システムの導入や既存フローの変更は必要ありません。チェック結果にコメントを書き足すと内容を学習するので、自社の社内レギュレーションや媒体独自のルールを反映させながら精度を上げていけます。
違反を出さない工程を作る
罰則の話は、入稿前に表現を潰しておけば大半が関係のない話になります。Result+AI法令チェックは3,000円分の無料トライアルから始められます。粒度を厳しめに設定して、いま出している広告がどう判定されるかを確認してください。
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注釈
注1:所要時間の比較について
外部の法令チェックサービスや人による目視確認では、動画・記事LP・LPは依頼から結果の受領まで2営業日程度かかることが多い。これを実時間に換算すると 24時間 × 60分 × 2日 = 2,880分。Result+AI法令チェックは同じ対象を5分以内で処理するため、2,880分 ÷ 5分 = 576となる。当社が外部委託していた際の実績に基づく比較であり、依頼先・ボリューム・繁忙状況により所要時間は変動する。処理時間はチェックの速度を示すもので、広告の成果を示すものではない。
注2:料金水準の比較について
2026年9月、当社調べ。公開情報で料金を確認できた薬機法チェックサービス・ツール12件と比較した。1件(1枚)あたりの単価を公開しているサービスは5,500円〜8,250円、月額制のツールは月額11,000円〜110,000円(一部は従量課金を併用)。Result+AI法令チェックはテキスト1件100円、画像1枚500円、動画1本1,000円、記事LP・LP1本1,000円。無料またはβ版として無償提供されているツール、および料金を公開していないサービスは比較対象から除いている。
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掲載した判定結果は特定の1本の動画広告に対するもので、平均値や標準的な件数を示すものではない。件数はチェック対象に含まれる表現の数だけ出る。掲載にあたっては広告主の許諾を得ている。
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注5:法令の記載について
本記事における法令の記述は2026年9月時点の情報に基づく。条文番号・法定刑・課徴金の算定率は法改正により変更されることがあるため、実際の判断にあたっては最新の法令およびe-Gov法令検索等の一次情報をご確認いただきたい。なお2025年6月1日施行の刑法改正により、従来の「懲役」「禁錮」は「拘禁刑」に一本化されている。本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、法的助言ではない。個別の事案については弁護士等の専門家にご相談いただきたい。
